現場リポート:2024年2月25日
今回は2/25に行われた診療実践コース「産婦人科」のレポートをお届けいたします。
今回私がこの講義を受講したきっかけですが、私は現在若手の総合診療医として中規模の市中病院で働いていて、総合診療科外来や救急外来を数多く担当しているのですが、その際若い女性や妊婦の腹痛、閉経前後の女性が持つ更年期障害と思われるような症状に思いの外遭遇する場面が多いため、一度総合診療医として対処できる産婦人科領域のスキルについて体系的に学習したいと考えたからです。
そのような思いを抱えた中で始まった今回の講義ですが、最初に妊娠中に使用できる薬やその他妊婦を診察する際の注意点について教えて頂きました。印象に残ったポイントとして、「どのような主訴であってもまず妊婦のレッドフラッグである胎動減少・破水・子宮収縮・性器出血を確認する」がありました。特にどれくらい胎動が無ければ胎動減少なのか、どれくらいの妊娠週数から胎動を感じるのか、異常とされる子宮収縮の頻度は何回なのかなど非専門医にとって馴染みが無い部分に関しても具体的に教えて下さったため、非常に実践しやすいと感じました。また今日の医師が必ず遭遇し得る新型コロナウイルスの診療に関しても、妊婦の場合に使用出来ない薬剤を確認することが出来たため、非常に有難かったです。その他妊婦が風邪や腹痛、腰痛などの症状を呈した時に注意するべきポイントに関しても簡潔にまとめられていて非専門医でも理解しやすいと感じました。
【次のテーマは、産後の薬剤に関する注意点や産後の女性に起こり得るトラブルに関してでした。特に周産期うつ病の診療の注意点に関しては、非常に多くの学びを得ることが出来ました。プライマリケア医として外来診療を行う上で精神疾患として介入が必要な症例も数多く経験するため、周産期うつ病とマタニティブルーの違い、産後ケア施設など社会的サポートの存在を確認することが出来た点は、我々のようなプライマリケア医にとって非常に有用であったと思います。
その後は、緊急避妊ピルや避妊ピルに関して教えて頂きました。恥ずかしながら私自身はこれまでピルを自分で処方した経験は無かったため、殆ど知識を持ち合わせておらずどれも新鮮な知識として学ぶことが出来ました。特に避妊ピルを内服中であっても飲み忘れた場合には緊急避妊ピルが必要となる場面があり、月経とのタイミングや避妊ピル内服開始からの日数によって緊急避妊ピルの必要性が変わる点は、非専門医にとってなかなか勉強出来る機会が無くどうしても複雑に感じやすいですが、今回の講義では非常に分かりやすく解説されていると感じました。また緊急避妊ピルを処方する上で確認するべき問診事項や説明するべき副作用、患者からよくある質問に対する回答についても知ることが出来たため、非常に有難かったです。
そして講義の内容は、プライマリケア医として知っておきたい月経困難症や月経前症候群の診療に移っていきました。非専門医にとって低用量ピルの処方はハードルが高い印象でしたが、それ以外の漢方薬や鎮痛薬も含めて実際の使用法を詳しく教えて頂けたため我々でも直ぐに実践出来ると感じました。また産婦人科の診療に対してどうしても内診や経腟超音波検査が必須と考えがちですが、必ずしもそうではないと産婦人科の先生から言って頂けたことは非専門医にとって産婦人科領域へのハードルを下げる一助になったのではと感じました。
その後は、いよいよ総合診療科外来で遭遇する頻度が高い更年期障害について講義して頂きました。外来をしていると、更年期女性の症状に対して様々な精査を進めても明らかな器質的疾患が無く精神疾患や不定愁訴として対応されている例をよく見かけますが、その中に更年期障害の症例は多く存在すると思われます。そのため、プライマリケア医にとって更年期障害の診療を理解することは非常に重要であり1度体系的に学びたいと常日頃感じていました。今回の講義で学んだ内容のうち、更年期障害の診断に内診やホルモン検査が要らないことや、初期治療は大豆のサプリメントや漢方薬で問題ないことは、私にとって非常に印象に残ったと共に、我々のような非専門医でも治療介入を測りやすいと感じることが出来ました。一方でホルモン補充療法を開始する際には産婦人科での内診や経腟超音波検査が必須であることも知ることが出来たため、産婦人科への紹介のタイミングも非常に分かりやすいとも思いました。
そして最後に救急外来などで必須となる腹痛の鑑別に関して学習しました。異所性妊娠や卵巣嚢腫茎捻転など産婦人科領域の急性腹症についてエコー画像を交えながら知識を整理出来たため、非常に有意義な時間となりました。
以上が今回の講義内容でしたが、プライマリケア医が持つ産婦人科領域の疑問や遭遇し得る疾患の知識についてたった1日で網羅的に学ぶことが出来たため、総合診療医として働く私にとってとても貴重な機会となりました。この講義は、産婦人科領域に対するハードルが高くなかなか手を付けにくいと感じているプライマリケアの先生や、これからプライマリケアに従事しようと考えている先生には非常に役立つ内容ばかりだと思います。
【開催日】
2024年2月25日(日)
【テーマ】
診療実践コース:産婦人科
【講師】
柴田 綾子
(淀川キリスト教病院 産婦人科)
【研修目標】
・女性の腹痛や更年期障害に対して、産婦人科へのコンサルトのタイミングがわかる
・緊急避妊ピルや低用量ピルを処方できる
・妊婦や産後の患者に対して安全に薬を処方できる