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​現場リポート:2023年4月2日

総合医育成プログラム、今回のテーマはEBMです。
講師の先生はThe SPELLのホームページでおなじみの南郷先生です。
ポリファーマシーの問題やEBMの実践は、忙しい日常診療の中ではなかなか手をだすのが難しいもの・・・。そんな難しい問題に対してグループワークを通して学習することができます。なんと、18人ものファシリテーターがおり、各グループに一人担当が付いているので司会進行の心配はありませんでした。

【エビデンスに基づいたポリファーマシーを上手に解消する!】
〈ポリファーマシー講義〉
普段ポリファーマシーは患者に悪影響と頭にはあるものの、忙しい外来ではなかなか腰が重い領域。処方するのは簡単でも撤退するのが難しいのは医学の常なのかもしれません。そんなポリファーマシーの対処法について座学で教えていただきました。先生のスライドの中でも、「3剤では散財する、5剤は合剤でも多すぎる、10剤では重罪だ!」の標語はわかりやすかったです。
ポリファーマシーの減薬に至るまでのSTOPP/START Criteriaや、それをどのようにして忙しい外来で活かしていくのか、非常に参考になりました。何よりも、総合診療科は世直し大明神になってはならない(むやみやたらに正論を振りかざしてかかりつけ医の処方の変更を命じない)というのは、エビデンスだけではない実際の感覚を教えていただきました。

〈ポリファーマシーグループワーク〉
よくある症例で、15剤も処方されている85歳女性の薬剤をいかに減量するかといった現実に即したグループワークでした。18グループがそれぞれの考えで処方をエビデンスに従って薬剤を減らしてみると、減量を含めるとほとんどのチームが半分以上に減らすことができました。不要な薬剤を減らすという意識付けができ、かつその根拠まで考えることができました。
普段いかに症状を特定して薬剤を処方するかということを議論していますが、処方された薬剤を中止していいのかについて議論する機会は今まで少なかったので、これだけ大勢の意見を知れるのは貴重な機会でした。

 

【論文を読まずにEBMを実践しよう!】
〈総合診療科とは?〉
話は少し外れて総合診療科とは?という説明もしていただきました。
医者の中でも混同しがちな、家庭医と総合診療医、総合内科医の違いや、総合診療医の強みについて解説していただきました。
総合診療科として働いているため自分でも理解しているつもりではありましたが、改めて説明を聞くととても参考になります。講義の中で出てきた総合診療医は「カメレオン」のような存在。まさしくその通りだと思いました。

〈論文を読まないEBMの実践〉
EBMはJournal clubに代表されるように論文を読んで行うのがスタンダートではあるが、実臨床だとそんな時間はありませんよね。
実際は教科書、ガイドライン、UpToDate、DynaMedなどを駆使して疑問を解決していくと思います。そんな二次資料の活用方法を教えていただきました。
Background question(病態の基礎知識)経験とともには徐々に減っていきますが、Foreground question(臨床現場での目の前の疑問)は臨床経験が増えるにつれてどんどん増えていきます。次第に増えていく疑問、そして明確な答えのない疑問は自分で解決しなくてはいけません。二次資料を使用して素早くForeground questionを解決するのは医師の必須技能といえるでしょう。UpToDateの使い方、DynaMedの使い方など、改めて学ぶ事ができて日常診療にダイレクトに活かせる内容でした

〈EBMグループワーク〉
認知症患者でドネペジルが入っている患者について、認知機能・周辺症状が悪化してきた場合にメマンチンを併用するか、といった臨床に即した疑問でグループワークを行いました。ガイドラインやUpToDate、DynaMedを確認してそれぞれの意見が少しずつ異なり、それを患者さんの背景や医師側の臨床経験に合わせて処方を考える。南郷先生のお話で、「1つの答えには収束しないが、それがEBMということなのです」というお言葉は得心のいくものでした。
日常診療で疑問にあたったときに解決する力が培われると思いました。

 

今回はEBMの実践講座を体験させていただきました。
日常診療ではあまり強く意識せず、むしろ無意識領域で行っているEBM。今回あえて意識して実践してみると普段の臨床がより良く活きるPearlが沢山ありました。
言わずとしれた南郷先生の講義とグループワーク、受講の価値は計り知れません。
ぜひ皆さんのご参加をお待ちしております。

【開催日】
2023年4月2日(日)

【テーマ】

診療実践コース:EBM

【講師】

南郷 栄秀 先生(聖母病院総合診療科)

【研修目標】

・原著論文や診療ガイドラインを鵜呑みにせず批判的に読み、患者の診療に役立てることができる
・エビデンスに基づいた適切な治療を考え、処方薬の整理ができる

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