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​現場リポート:2023年2月12日

総合医育成プログラム、2023年の第1回となる今回はオンラインでの小児科診療実践コースでした。
事前アンケートでは中学生の診察を行う先生方はそれなりにいましたが、乳幼児の診察を行っている先生はごく少数。
今回は普段あまり診察することの少ない小児の、特に緊急性がない場合の診察を学ぶ会でした。かくいう私も小児科診察には正直心のハードルも高いと感じておりましたが、参加者のみなさんも同じ気持ちであり、楽しみながら学習することができました。

【こどもの診察実践】
小学生、中学生以降であればまだしも乳幼児~幼児までの診察はやはり大人と同じようにはいかないもの。そんな普段の診療の悩みの助けになるTipsを教えていただきました。
5人1チームに分かれて小児の診察についてディスカッション。しかしほとんどの先生が小児の診察の経験がないため、どんなことに気をつけたほうが良いのか、どのようにして小児科に紹介する患者を抽出するのかというところから議論しました。やはり皆さん悩むところは同じなんですね。

小児診察で重要なことは、PAT(Pediatric Assessment Triangle)を使用して重症度を判断つ、母親との関係の構築、小児への敬意を払って診察する、自分で訴えられない鼓膜の異常やおむつの中まで診察するといった姿勢が重要であると学びました。
次回小児、特に乳幼児の診察の機会があれば実践したいと思います。

 

【3日間続く発熱】
新型コロナウイルスの最中、かつインフルエンザまで猛威を振るっている昨今、できる限り診たくないけど確実に診なくてはならない症状だと思います。

しかも、テーマは発熱してから3日目解熱しない発熱。3日目の発熱は上気道炎以外を考え出す時期であり、小児科の先生でも嫌な気持ちになるそう。そんなときにどのようにして考えるべきなのか詳しく教えていただきました。

今回はテーマとして緊急性はないという前提はありましたが、小児の診察は全てPATを確認することから始まります。外観、呼吸、皮膚循環を確認して問題なければ月齢ごとに注意すべき疾患や、母子手帳の確認、季節を考慮します。
小児で難しいポイントはやはり小さなお子さんは自分で訴えられないところだと思います。小児の発熱では鼓膜、口腔内、関節を確認することが大事だと感じました。

小児の発熱で参加者の多くが心配になることは、どの小児を専門医に送ったほうがよいのか、どのラインまでは自施設で診てもよいのかという点だと思います。講義では送るべき小児の症例や徴候を詳しく教えていただきました。
詳細は、、、是非参加して確かめてください!

 

【知っておきたいワクチンプラクティス】
新型コロナウイルスのあおりを受けてオンライン開催になった今回。オンサイトであれば耳鏡を使った実技であったのが、今回はワクチンプラクティスに変わりました。小児では4つのワクチンを同時に摂取する必要もあります。そんなときに、同時接種のポイントや、有害事象への対応について教えていただきました。
耳鏡を使った実技も非常に興味がありますが、今回のワクチンプラクティスもとても臨床的に重要なポイントであったと思います!

【夜間の頻回嘔吐】
頻回の嘔吐が続くとき、親御さんはもちろん我々も点滴が必要か、入院が必要か、原因はなにかについて悩まれることが多いと思います。
やはり重要なのはPATで重症度を評価です。問題がなさそうであれば、嘔吐の年代別鑑別疾患を考えます。乳幼児で最も多いのは母乳の飲み過ぎとのこと。乳幼児をあまり診たことがなければあまり想起出来ないかもしれません。
髄膜炎や腸重積、血糖異常をまず鑑別してからは圧倒的に数の多い腸炎の可能性が高まって来ます。

成人であれば飲水できれば帰宅ですが、乳幼児で経口補水液の与え方は?
そんな実際に説明するときにとても迷う疑問も詳しく教えていただけました。小児への点滴が実際には難しいクリニックでは重宝する知識が満載でした。

 

【痙攣はとまっているけど、、】
テーマは家で痙攣して、止まっているけど念のため受診したという症例。痙攣の最中であれば当然救急搬送されますが、たしかに痙攣が止まっているあとにはクリニックに受診しても不思議ではありませんよね。
まずは年齢、発熱の有無、強い啼泣があるか、下痢があるかを確認して痙攣の持続時間や初発かどうか家族歴を確認します。しっかり勉強してからではないと項目を忘れてしまいそうです。
未就学児の痙攣で圧倒的に数の多い熱性痙攣子供の10人に1人は経験するそう。8割の子供は1回のみで痙攣は再発しないと言われていますが、どんな子供にダイアップ坐薬を予防投与したほうがいいのか?心配している親御さんへの説明は?もしも発熱がなかった場合は?
正直、この講義を受けていなければとりあえず小児科に送ってしまっていたと思います。
そんな小児科診療初学者向けに、少なくても最低限のアセスメントをして何も考えることなく小児科医に送ることを防ぐこと目標に講義を受けさせていただきました。

【全体を通じて】
今回小児科診察実践を体験させていただきました。各論ごとに感想を書いてきましたが、圧倒的におすすめするポイントは、質問のしやすさです。ZOOMでのレクチャーとのことで質問しにくいのかなと思っていましたが、むしろチャットで質問を打ち込むと2人の講師のうち空いているもう一人の先生が質問を返してくれるので、講義に関連した日々の臨床の疑問に答えていただけました。自分の子供に関する質問をしている先生もいましたよ。
 今回の診察実践はとても臨床に即しており、かつ参加者も日々の臨床で同じ悩みを抱える方ばかりなので非常に参加しやすかったです。
 是非皆さんの参加をお待ちしています。

【開催日】
2023年2月12日(日)

【テーマ】

診療実践コース:小児科

【講師】

高村 昭輝 先生(富山大学医学教育学)
山本 正仁 先生(長浜赤十字病院)

【研修目標】

・重症度、緊急度が高くないとトリアージされた、よくある小児の症候を救急外来や急病診療所で           マネジメントできる
・科学的根拠に基づいた病状説明で保護者を安心させられる
・3日続く発熱でも安易に小児科に紹介しなくても対応できる
・嘔吐のときに何とか点滴しないで乗り切ることができる
・痙攣が止まっている場合の、こわいときとこわくないときが判断できる
・子どもの効果的な診察のコツとよくある疾患

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