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​現場リポート:2023年8月26日

今回は「臨床推論」をテーマにご講義を頂きました。
患者さんの病態・疾患を把握し診断に繋げるための「臨床推論」は、日々の診療に欠かせないプロセスですが、これまでを振り返ってみると、普段の診療の中で「臨床推論」そのものについてしっかり学ぶ機会はなかなかなく、とても貴重な勉強の機会でした!

 

前半、第1部では臨床推論の方法について学びました。
診断に至るまでの臨床推論の過程は、「仮説生成」と「仮説検証」の2つに分かれます。
この2つについてそれぞれ解説を頂きました。

【仮説生成について】
まず、患者さんから得た生の情報を普遍的な医学用語に置き換えたものをSemantic Qualifier(SQ)といいます。実際にいくつかの症例を用いて、SQに置き換える練習もしました。SQに置き換えることで、それに対応した疾患リストを想起しやすくなります。疾患リストの作り方についても、語呂合わせ、診断シェーマ、AIなど様々あります。私は今まで診断支援のためのAIは用いたことがありませんでしたが、実際にいくつかの便利なシステムもご紹介いただき、実際の臨床現場でも使ってみたくなりました!臨床現場でだけでなく、自分の臨床推論の振り返りや復習の際にも役立つだろうなと感じました。
これらのリストの中身に、可能性の高いものから優先順位をつけるまでが仮説生成です。

【仮説検証について】
検証のステップとしては、まず検査や治療のメリット・デメリットに応じて検査・治療閾値を設定します。次に事前確率を見積もります。この際に役立つ臨床予測の様々なスコアリングなども引き出しを増やしていきたいです。
そして次に適切な検証法を選択します。ここでは尤度比の考え方について学びました。
「尤度比」「事前確率」など、なんとなく難しいイメージがあり、普段は考えることを避けてしまっていましたが、臨床推論の過程において大切な考え方であると改めて感じました。これらのステップを経て、検査実施と結果の解釈までが仮説検証になります。

第1部では、仮説生成や仮説検証のステップを踏み、診断につなげるプロセスを理解することができました。次に第2部では、ケースプラクティスによって臨床推論実践を行いました。

今回はzoomでのレクチャーでしたが、チャット機能を用いてケースプラクティスに取り組み、自分なりの意見や質問を自由に発言し、講師の先生にフィードバックやご解説を頂くことができ、参加型で楽しく学ぶことができました。

後半は 第3部:臨床推論と多職種連携 で始まりました。アンケートで医師以外が臨床推論に関わっていると思うかどうかを問われました。総合診療医育成プログラムへ参加されている先生方ということもあり、過半数が「思う」と回答されていました。臨床推論というと医師の仕事と思いがちですが、医師以外の職種も医療職でない患者さんもまた臨床推論しているとのことでした。私は普段あまり意識していませんでしたが、振り返るとその臨床推論に助けられたことが少なくないことに思い当たりました。

 

事務、放射線技師、薬剤師(病院、薬局)、理学療法士、看護師の方からそれぞれ講義があり、職種毎に診断プロセスのどの段階に関わっているかの差はあれど、患者さんが病院に来てから帰るまでにどの職種も診断に関わっていることをそれぞれの視点で分かりやすく教えて頂きました。個人差もあるとは思いますが、発表してくださった方々は皆診断に関わることをプラスの感情で受け入れてくださっていました。診断に役立ったことをフィードバックしたら励みになる、診断のためならどんどん注文を付けてほしい、意見交換をしたい、連携は得意だから任せてほしいなどなど、とても頼もしく感じました。私自身としてはまだまだ力を借り切れていないなと反省いたしました。薬剤師さんからは少し耳の痛いお話で、医師は患者の内服薬40%を把握できていない、高齢者の入院の原因の約5~10%は薬剤によるものだといわれているので、情報共有が大事とのことです。ここまで多職種の実のところのお話しを伺って、初めのアンケートで医師以外の職種も臨床推論に関わっていると思うと答えられた先生方はどのような場面でそう感じられ、フィードバックされているのか気になりました。

これからは「診断」もチームでおこなう時代だそうです。気軽に意見を出し合える環境を作っていきましょうとのことでした。医師以外の職種からは言い出しにくい状況は容易に想像が付きますので、この講義を聞いた私たちが率先して空気を変えられたらよいなと思いました。また医療者だけでなく、患者さんも臨床推論をしていますから患者・家族を含んだチームで患者経験を最大化して、かつチームでの診断の促進がこれからの望まれる「チーム診断」になりそうです。

最後に、第4部:質疑応答+補足 フロアの先生から前半で実践した事前確率についてご質問があり、各施設や地域の臨床の感覚が大事とすべての参加者にあてはまる回答を頂きました。さらに、原田先生自ら使われているAIのプロンプトをお示しいただき、臨床応用に向けてアクティブなお話しも伺うことが出来ました。6時間ほぼ丸々熱くご講義いただきました原田先生、誠に有難うございました。

【開催日】
2023年8月26日(土)

【テーマ】

診療実践コース:臨床推論

【講師】

原田 侑典
(獨協医科大学総合診療医学)

【研修目標】

・臨床推論における仮説生成の方法を知り、実践できる
・臨床推論における仮説検証の方法を知り、実践できる
・臨床推論におけるAIの利用方法を知る
・臨床推論における多職種連携について知る
・臨床推論における振り返りの重要性について知る

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