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​現場リポート:2023年7月9日

今回の講義ではうつ・不安・せん妄・身体症状症について扱っていただきました。総合診療科の多くの医師は対応しなければならない領域であり、一方でどこまでを自分達で対応し、どこからが専門医に依頼すべきか悩ましいという問題も抱える領域でもあります。うつ・不安・身体症状症などはcommonではあるものの患者さん一人一人症状の程度や背景などあらゆるものが異なっており、加えて改善と悪化の波も存在して長期的に介入する必要がああるということが難しさになっていると私は感じていました。今回は専門医治療の要・不要の線引きも含めてプライマリ・ケアでどう精神科疾患を拾い上げるか、治療はどうするか、コンサルのタイミングはどう判断するか、に至るまで広く体系的な講義を行っていただきました。

講義では午前は主に問診~診断、午後には診断~治療について講義していただきました。講義内容はエビデンスに基づいているのはもちろんのこと、今村先生の経験則も加味されており、問診におけるより実践的な言い回しや情報収集の方法、危険な状況を察知するためのポイントを教えていただきました。双極性の鑑別目的に性的逸脱の質問をする際の周り道の仕方や、問診の過程で「でも」が続いたら届いていないと判断して話題の切り替える、などかなり実践的な現場でのアプローチ方法を伝授していただきました。講義の中では所々5人程度の小グループに分かれてのグループワークがあり、例題を基に色々なことを考える機会を作って下さいました。私自身に臨床経験が乏しいことから不安な面もありましたが、同じグループになった先生方にアドバイスをいただきながら参加することができました。また、グループワークは議論を深められただけではなく、長年臨床に携わっている先生方であっても専門外である精神科領域には悩ましいと感じる問題が多くあり苦労している、という精神科の特殊性を改めて肌で感じるきっかけにもなりました。

本講座では開催時間全体通してチャット上で質問を随時受け付けるという形をとっていただきました。質問内容はプライマリ・ケアを行う多くの医師が抱えているであろう疑問や、グループワークのあと、「○○のような意見も出ました」といったような講義に深みを作るものなど多岐にわたっており、そのそれぞれに丁寧にご回答いただきました。私は自分が抱えていた疑問と同じ内容の質問が出てきたことに「この疑問を感じていたのは自分だけではなかった」と、安心できたと同時にその疑問に回答もご教授していただき大変参考になりました。

今回の講義を通して、これまでは断片的にしか行えていなかった精神科領域の診断・治療について一元的に取り組んでみたい気持ちが強くなりました。多くの医師が対処しなければいけない場面に遭遇するから何とか対応しているが、実は突き詰めて考えるとハッキリと分かっていないことが沢山ある。つい後回しにしてしまったり専門医に丸投げしてしまいがち。そんな精神科領域について学びのきっかけを下さってとても勉強になりました。本講座は精神科疾患を体系的に学ぶ機会を求める先生方に大変参考になる講座であり、参加することで今後の診療の支えとなってくれるものだと思います。この度は貴重な講座を開催していただきありがとうございました。

【開催日】
2023年7月9日(日)

【テーマ】

診療実践コース:精神科

【講師】

今村 弥生
(杏林大学医学部精神神経科)

【研修目標】

・プライマリ・ケア領域でも遭遇しうるcommonな精神症状としてのうつと不安・せん妄・身体症状症に適切な対処ができるようになる
・プライマリ・ケア領域では対処困難な精神疾患を持つ患者を早期に判断し、一人で抱え込む前に専門家へつなぐことができる
・人生相談的精神療法がある程度できるようになる
・治療を拒否する患者への対応についての法的事項(精神保健福祉法)について部分的に理解する
・精神科領域の苦手意識が減り、他の非専門領域と同じテンションで対応することができる

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