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​現場リポート:2023年7月23日

今回は7 /23 に行われたノンテクニカルスキルコース「現場での効果的な教育方法」のレポートをお届けいたします。
今回私がこの講義を受講したきっかけですが、私は現在若手の医師として大学病院で働いていて、研修医の先生や学生さんと接する機会が多く指導しなければいけない場面が多いため、一度どうやったら良い教育が出来るのか勉強したいと思ったからです。また後輩を指導したい気持ちはあるものの、日々の忙しい臨床業務をこなしながら短時間で十分な指導が出来ないことに対するもどかしさを感じていたことも受講理由の1 つでした。
そのような感情を抱えた中で始まった今回の講義ですが、最初にそもそも教育とは何かという話から始まりました。印象に残ったポイントとして、「指導者が教えた≠学習者が学んだ」「学習者が挑戦するためには指導者側がリスクを担保出来るような環境を作ることが重要」「いいとこ探しを意識的に行う」がありました。特に指導するにあたって良いところを探すということは私が意識できていないことであったため、学習者のモチベーションを上げる意味でもいきなり不足している部分を指摘するのではなく出来ている部分を伝えることは非常に重要であると実感することが出来ました。また、実際に身の周りにある道具の良いところを5 つ以上上げるというワークも行いましたが、想像以上に難しく普段から意識的に行っていないとなかなか身につかないスキルだとも感じました。

その後はいよいよ具体的なフィードバック方法へと話が移っていきました。フィードバックの原則は「聞く、認める、次に生かす」とのことでしたが、私自身もこれまで様々な指導者と接してきて「聞く、認める」が出来ている人はなかなかいないなと感じました。そのような指導者は、研修医や学生がプレゼンをしていても気になった部分が出てきたらすぐに話をさえぎって指導を始めてしまうため、学習者がどう考えていて何が分かっていないのかを十分に把握せずにフィードバックを行っていることが多いのだと気づくことが出来ました。そして実際にロールプレイを通してフィードバックの練習を行ったことで、自身のフィードバックに足りない部分を自覚することが出来た意味でも非常に貴重な機会となりました。

さらに、丁寧にフィードバックを行う時間が取れない忙しい臨床現場において有効な2 分間フィードバックについても教えて頂くことが出来ました。この方法は、救急外来などで研修医の先生と働く場面が多い自分にとっては非常にありがたく、すぐに実践できる方法であったため、この講義以降積極的に使用するようにしています。
その後は複数人を対象としたレクチャーやカンファレンスの進め方に関しても聞くことが出来ました。特にレクチャーと教科書の違いや聞き手が眠くならないために意識するべきポイントを把握した上で、実際に3 分間レクチャーのワークを行うことが出来たため、聞き手から自分のレクチャーに足りない部分を指摘して頂けたことは他ではなかなか経験出来ないことであったと感じています。

以上が今回の講義内容でしたが、全てを通して感じたこととして、学習者側の習熟度やモチベーションは指導者の教育方法によってかなり変わり得るということを改めて実感する
ことが出来ました。そして自身の指導に足りない部分を客観的に教えて頂き、具体的かつ実践的な指導方法のステップを実践することが出来たため、今回の講義を受けてとても良かったと感じています。この講義は、自分の教育方法を見直したいと思っている指導者の方々や、私と同じようにこれから指導者として働いていく若手の方々にとっては非常に役立つ内容ばかりなので、是非受講することをお勧めします。

今回の講座では現場での効果的な教育方法について前野先生に講義していただきました。まず
イントロダクション的に教育には出し手と受け手がいること、カリキュラムというものの重要性につ
いてお話ししていだきました。
そこからは教育方法についてテーマごとに講義を受けて、少人数のグループワークで実践できる
ように模擬トレーニングを行う、全体で振り返るというのを繰り返し実施しました。フィードバックの
やり方、レクチャーの仕方、カンファレンスの話し方などといった項目について適切に進めるため
の技術を小グループで学んでいきました。普段、後期研修医として大学病院に勤務している私の
立場からすると、開業されている先生、市中病院に勤務されている先生など様々な立場の先生方
とグループワークできたことで色々な視点を学ぶことができました。と、同時に先生方の研修医時
代の話を少し聞いたりしたことで、今の時代に専攻医の研修を受けられているということは恵まれ
た環境で勉強できているのだということも実感することができました。

フィードバックの項目では普段自分がフィードバックをしてもらっている立場からフィードバックをす
る立場となり、相手の話を聞いて分析することの難しさを知ることもできました。会話の中で情報を
整理して相手に分かるように伝えるという技術は、素早い頭の回転が必要で意識して訓練しなけ
れば身に着けられない技術だと実感しました。このような気づきは実感する機会がないと中々得
ることのできない気づきであると考えますが、日常の診療現場においては特に若手医師はフィー
ドバックの機会は受ける側であることが圧倒的に多く、意図的に環境を作りださないとフィードバッ
クする側というには経験できないものだと思いました。そのような意味でも今回の講義は良い経験
となりました。
各項目についてグループワークの前後に先生の解説を受けるという方式でしたが、前野先生のお
話は例え話が究極的に分かりやすく、メッセージが単純明快で頭の悪い私でもとても理解しやす
いものでした。適切なレクチャーの項目でもあったように聞き手の記憶にはわずかしか残らないと
いう前提の下、できるだけ情報が明瞭に伝わるよう工夫していただいた解説を受けることが出来
ました。

今回の講義は臨床の現場で持続的に成長可能なチームを作るための要素が詰まった講義でした。
上級医やチームのリーダーから適切なフィードバックを受けられる環境が確保されることでカンフ
ァレンスが形式的なものではなく中身の充実したものになると思います。これが良いサイクルを生
み出して医師・医療者一人一人の成長につながるのだと感じました。今日の複雑な医療現場を乗
り切るためにはチーム力は必須でありチーム力を上げるための要素を学ぶ場としてこれ以上のも
のはないクオリティでした。チーム医療にかかわる全ての医療者にぜひ受けていただきたい講義
です。

【開催日】
2023年7月23日(日)

【テーマ】

ノンテクニカルスキルコース:現場での効果的な教育方法

【講師】

前野 哲博
(筑波大学総合診療科)

【研修目標】

・学習者のやる気を促進し、次の成長につながるフィードバックができる
・学習者の省察を促し、経験を学びに変える振り返りが実施できる
・短時間で要点を押さえたレクチャーを効果的に実施して、学習者の記憶の定着を図ることができる
・教育カンファレンスを主催し、参加者全員が一般原則を理解し、応用力を高める学びの場にすることができる

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