現場リポート:2019年10月20日
今回はスクール形式です。
4名の先生方が講師をおつとめくださいます。
まずは柴田先生にウィメンズヘルスについて教えていただきます。
実に半数近くの女性が月経に関して困っていることがあるにもかかわらず、産婦人科にかからずに我慢しているという実態があるそうです。聞かれないからいわない、というケースが多いので、内科外来でも「何か生理で困っていることはありませんか?」という質問を問診に加えることが大切です。
同じく柴田先生による女性の腹痛のお話です。
異所性妊娠、骨盤内炎症性疾患、卵巣出血、卵巣嚢腫茎捻転の4つの疾患がわかれば、女性の腹痛の90%をカバーすることができるそうです。
そしてなんと! 妊娠検査と超音波検査の2つの検査をすればメジャーな4疾患は鑑別可能なのです!
本人は知らぬまま、救急外来で妊娠が判明する割合は、腹痛の訴えがあると1割以上に及びます。
妊娠可能年齢は、最年少は8歳から、最高齢は74歳! まさに「女性を診たら妊娠を疑え」ですね……。
妊娠について聞くときには、「あなた」の妊娠を疑っているわけではなく、女性患者さんには全員に聞いている、と伝えることがコツです。
さらに、各疾患の診断のコツや検査の裏技、治療などについて、症例を交えつつ、わかりやすくレクチャーしていただきます。
月経に関しても、初経・閉経年齢、月経前症候群への漢方や生活の工夫など、詳しく学んでいきます。
遠見先生に緊急避妊ピルに関してご講演いただきます。
月経周期のホルモン分泌や子宮内膜・基礎体温の変化、月経移動、妊娠週数から、緊急避妊の話題に入っていきます。
緊急避妊薬の種類や処方の流れを学びます。緊急避妊薬処方の際には、必要な問診は4つ(内容はスクーリングで!)で、妊娠が疑われる場合には妊娠検査を勧めます。
緊急避妊薬は、海外では76ヵ国で処方箋不要で薬剤師から購入でき、19ヵ国ではOTC化されています。一方、日本ではOTC化が見送られましたが、オンライン診療において条件つきで処方が認められることになりました。
日本の避妊法としては、コンドームと膣外射精が9割以上を占め、低用量ピルや子宮内避妊具はあまり普及していません。
各避妊法の効果、低用量ピルの種類や処方の流れなども説明していただきます。
そして中絶。中絶は、世界に先駆けて、1948年に日本で事実上合法化されました。
法律や中絶・流産手術の種類、性と生殖に関する健康と権利についても学びます。
最後に、ロールプレイで緊急避妊薬処方にトライします。
遠見先生と井上先生のお手本は非常に勉強になります!
続いて、井上先生のプレコンセプション・ケアに移ります。
皆さん、プレコンセプション・ケアって、なんだかおわかりですか?
妊娠前の女性やカップルに、妊娠中の疾患リスク低減や周産期アウトカム改善、その後のヘルスプロモーションを目的としてケアすること、をいいます。
プレコンセプション・ケアで扱う項目は、感染症、検診・疾患管理、生活・栄養、妊娠時期の4つにカテゴライズされます。
感染症は男性にも気をつけてもらわなければなりません。風疹ワクチン接種の機会がなかった男性は1962~1979年(昭和37~54年)生まれの方、覚え方は「無に泣く、みなご用心」です。
性感染症をはじめとした感染症のスクーリング、合併する慢性疾患の管理、タバコ・アルコール、体重管理、栄養、歯科検診・治療、家族計画について解説していただきます。
産後にも、次の妊娠に備えたプレコンセプション・ケアがあります。
せっかく禁煙したのに、産後に喫煙を再開するケースもあるので、禁煙を続けられるように働きかけます。
また、若年・未婚、身体・精神疾患の合併といった社会的ハイリスク妊産婦は増加しています。妊産婦死亡原因の第1位は自殺です。
子育て世代包括支援センターなどの関連機関とも連携し、地域で切れ目のないサポートを提供していくことが望まれます。
症例に対して、どんなアプローチができるかを2人1組で話し合うワークを行い、プレコンセプション・ケアの講義は終了です。
次は、柴田先生に更年期障害と帯下異常・骨盤臓器脱について教えていただきます。
なんと64%の女性が、更年期の症状があっても何もしていません。
45~55歳前後の女性の不定愁訴は更年期障害を疑い、月経に関して確認してみるとよいかもしれません。
更年期障害の診断には検査は必要なく、問診で診断できます。
典型的なホットフラッシュがない場合もあり、関節痛やめまいなどが主症状の患者さんもいます。
更年期障害の鑑別、治療に入ります。
更年期障害に対しては、服の重ね着といった生活アドバイスがキモになります。加えて、統合医療やホルモン補充療法に関しても勉強します。
そして、ロールプレイで更年期障害診療の練習をしてみます。
次に、帯下異常と骨盤臓器脱のお話です。
鑑別や各論について、必要な情報を端的にまとめてくださるので、理解が進みます。
そして、福井先生による妊産婦の薬のレクチャーです。
降圧薬、糖尿病と妊娠、妊娠糖尿病、妊娠・授乳中の薬剤について解説していただきます。
「糖尿病があっても妊娠できますか?」と患者さんに聞かれた場合、妊娠はできますが、いますぐに姙娠してよいということではありません。
妊娠前にしっかりと血糖値を管理することで、母児合併症を減少させることができます。
妊娠・授乳と薬剤はクイズ形式で進んでいきます。
妊婦さんが花粉症や便秘でお困りであったり、インフルエンザに罹患してしまったりした場合など、実臨床に即した実践的な知識が満載です。
女性診療に関して、専門医でなくとも知っておくべき厳選された知識が身についた1日でした!
フロアからの質問もポストイットで集め、非常に丁寧にフォローしていただきました。
なかなかにデリケートな部分もある産婦人科領域ですが、日頃のもやもやが解消され、女性の診療にも積極的に取り組めそうです!
皆さんもスクーリングに参加して、女性のみかたになりませんか?
【開催日】
2019年10月20日
【テーマ】
産婦人科
【講師】
柴田綾子 先生
(淀川キリスト教病院 産婦人科)
遠見才希子 先生
(筑波大学大学院 社会精神保健学分野)
井上真智子 先生
(浜松医科大学 地域家庭医療学講座/静岡家庭医養成プログラム)
福井陽介 先生
(大和高田市立病院 産婦人科)
【研修目標】
・女性の腹痛や更年期障害に対して、産婦人科へのコンサルトのタイミングがわかる
・緊急避妊ピルや低用量ピルを処方できる
・妊婦や産後の患者に対して安全に薬を処方できる